数年ぶりに歯医者へ行った。
きっかけは、元歯科衛生士の友人からの一言。
「何もなくても3ヶ月に1回は検診に行ったほうがいいよ。」
……3ヶ月に1回!?
最後に行ったの、何年前だっけ。
30代になり、健康診断は定期的に受けている。
会社員時代と違って、フリーランスになった今は誰も体調管理をチェックしてくれない。
自発的に自分の体を点検しないといけないのだ。
ならば、歯科検診も受けておくべきかもしれない。
……とはいえ、ただでさえ出不精で、外に出るだけでも精神力を大幅に消費する私。
よりによって行き先は歯医者。気が重すぎる。
それでも友人の助言がなぜか耳に残り、勢いで予約ボタンをポチッ。
自宅から電車で15分。普通の人なら「近い」で片づける距離だろう。
でも私にとっては、気合を入れて臨まなければあっという間にへとへとになる一大イベントだ。
少ない外出の意欲を振り絞り、いざ出陣。
久しぶりすぎて歯医者がどんな感じだったか覚えていない。
とにかく治療の恐怖で頭がいっぱいだ。
まだ治す歯があるのかどうかもわからないのに。
なんで予約しちゃったんだろう…。
今更弱気になってきた。
しかしそんな気持ちは院内を見て和らいだ。
とても清潔感のある内装はまるで美容院。
Francfrancにありそうな可愛くてふわふわの椅子と照明。
歯医者のイメージが完全にアップデートされた。
「え、歯医者ってこんな洒落てたっけ?」と場違い感にソワソワする。
でもこういう素敵空間に来ると
自分のために時間やお金を使っている感覚になり、気分が上がる。
問診を書き、しばらくすると診察室に案内された。
初診ということでまずは口内をチェック。
おしゃれ気分も束の間。
診察結果は無情だった。
なんと虫歯が4つもあるとのこと。
定期検診ついでにホワイトニングもやりたいと伝えていたのだが、
「ホワイトニングの前に、まずは治療ですね。」
先ほど上がったテンションは急降下。
とほほである。
さらに追い打ちをかけるように、看護師さんからアドバイス。
「お家での歯磨きやフロス、もうちょっと頑張ってみてくださいね」
……フロス?
名前は聞いたことあるけど、実際に使ったことは一度もない。
そういえば友達の家に泊まったときも、洗面台でフロスを見た記憶なんてない。
みんな、いつの間にフロスと出会ってるんだ?
私だけチュートリアル飛ばされた?
どこの分岐で選択を間違えた?
口を大きく開けながら途方にくれる。
いい大人が歯磨きも満足にできていないなんて、
虫歯を4つもこさえているなんて、
おまけにフロスの存在も知らないなんて。
情けなくて恥ずかしい。
そんなこんなで第一回目の通院はなんとか終了。
久しぶりの歯医者は学びの連続だった。
虫歯は4つ、フロスは未知。しばらく通院生活が始まる。
あゝ、めんどくさい。
家を出る前に気合を入れた精神的HPはすでにゼロ。
まだ治療は始まったばかりなのに、初戦で全体力を使い果たしたような脱力感。
……しかし、これで終わりじゃなかった。
そう、この日はまだ「序章」。
ホワイトニングどころじゃない、更なる試練が私を待ち受けていたのだ——
to be continued…