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ホワイトニング目的で歯医者に行ったら人生を見直すことになった〜完結編〜 - ぽんず日記

ライフスタイル

ホワイトニング目的で歯医者に行ったら人生を見直すことになった〜完結編〜

2025.9.11

ついにこのシリーズも完結編を迎えることとなりました。

前回のお話はこちら。

ホワイトニング目的で歯医者に行ったら人生を見直すことになった〜治療編〜

 

虫歯治療を終えた私は、次なる目標であるホワイトニングを見据えていた。

 

ついでに前々から気になっていた“歯軋り”の相談もしてみたところ、

「もしかしたら、噛み合わせが原因かもしれませんね。」と先生。

 

その流れで歯科矯正の話になり、歯のスキャンとレントゲンを撮ることに。

そして「矯正をするなら、親知らずの抜歯が必要になるかもしれません。」

 

え………抜歯?

 

さらっと重大なワードが投下された。

 

噂には聞いていたけれど、まさか私の人生に「親知らずを抜く」という特大イベントがログインしてくるなんて、まさかまさかMASAKA。

 

頭の中で“抜歯”という言葉がこだまする。

 

「噛み合わせを整えることで歯軋りが軽減される場合もあるんですよ」。

なるほど。丁寧な説明をありがとうございます、先生。

でも白くしたいのは頭ではなく歯なんですよ、先生。

 

私の頭と同じくらい真っ白なレントゲンには((貴様の運命は我らが握っている))とでも言いたげな親知らずたちが、歯列の奥でじっと身をひそめている。

 

どうします?と選択を迫ってくる先生に私は「検討します…。」と言葉を発するのがやっとだった。

 

抜歯、抜歯、ばっし、…

何度考えても乗り越えられる気がしない。

ネットで「抜歯 体験談」と検索すると、抜歯がいかに痛いか、怖いか、ということが綴られた記事がわんさか出てきて後悔した。

 

ワードを「歯科矯正 専門」に変えて検索。

「大きな処置ゆえ、セカンドオピニオンは必要だよね。」

などと冷静なフリをしながら、

“もしかしたら抜歯を回避できるかもしれない”という淡い期待を胸に、

私は別の歯医者を予約した。

 

 

そして迎えた、セカンドオピニオン当日。

 

「歯科矯正を検討されてるなら、抜歯したほうがいいかもしれませんね。」

 

Noooooooooo!

私の中のマイケルが叫んだ。

 

前回の歯医者さんとほぼ同じセリフである。

私は抜歯確定演出のフラグを一体どこで回収してしまったのか。

 

怯える私を見て、どうにか安心させようとしてくれる先生。

「抜かなくてもいいですけど、虫歯のリスクがあるかもしれないですね…。

でも、歯磨きをしっかり頑張れば…とはいえ、う〜ん…」

慎重に言葉を選んでくれつつも、曖昧な返答。

たぶん先生としては、1%でも可能性があることは全部伝えておいたほうが誠実、という判断だったのだと思う。

その姿勢はありがたい。ありがたいんだけど…。

 

抜歯ルートから抜け出せない現実に、目を背けたくなる。

 

その後、抜歯についてのリスクや手術の流れをものすごく丁寧に説明してくださった。

しかし私は医療系の話が大の苦手。(今更すぎる)

話を聞いているうちにだんだんと血の気が引いてきて、

気がつけば冷や汗で手がびしょびしょ、顔面は蒼白。

だから白くしたいのは歯なんですってば!

 

心の中でノリツッコミしている場合ではない。

かなり限界が近い。

治療中でもないのに左手を上げて

「すみません、ちょっと休憩していいですか…」

 

突然の遮りにも関わらず先生は

「すみません!怖い話ばっかりしちゃいましたよね;」と気遣ってくれるばかりか、

「横になりますか?お水もどうぞ。」と、手厚く対応もしてくれた。

 

自分からカウンセリングに来ておいて、本当に申し訳ない。

 

「カウンセリングだけなら無料ですし、他の歯医者さんへ行かれても大丈夫なので、また気になることがあればいつでもお越しくださいね。」

 

…めちゃくちゃ良い先生じゃないか。

 

前に通っていた歯医者さんも好きだけど、もし抜歯するなら絶対この先生にお願いしたい。

そう思って「定期検診もこちらでお願いできますか?」と聞いてみたら

 

「当院は抜歯と矯正の専門なんです。定期検診や虫歯の治療は行っていないんですよ。」

 

Noooooooo…

私の中のマイケルがしょんぼりしている。

 

親知らずを抜くかどうかで数週間も悩み続け、

親知らずの存在が私の中でどんどん大きくなってゆく。

 

嫌いだったはずなのに、なぜかいつも考えてしまう…。

私の邪魔ばかりして

痛みも、不安も、全部置いていくくせに、

気づけばまた、思い出してる──そんなアイツ。

 

忘れようとしても、ふとした瞬間に疼く。

レントゲンの影が、私の心まで曇らせる。

 

どうしてよりによって歯として現れたの?

もっと違う形で出会いたかったよ…。

 

悶々としすぎて、恋愛小説のような妄想が膨らんでいく。

知らない間に、静かに育っていた親知らず。

親知らずどころか本人の私すら知らなかった。私知らずである。

 

そんな折、ふと思い出した。

前の歯医者で「次回はクリーニングをしましょうね。」と言われていたことを。

きれいにしておかなければ、また虫歯治療へ誘われてしまう。

それだけは避けたい。

 

しかし別の歯医者に行った手前、戻るのはなんとなく気まずい。

それにせっかくなら別の歯医者に行ってみたい!

ついでに“抜歯以外の選択肢”が提示される可能性にも賭けたいし。

 

こんなに短期間に複数の歯医者に通ったことなどない。

もはや歯医者のスタンプラリーである。

 

来院の目的欄に「抜歯と歯科矯正を検討しています。必要であれば口内クリーニングもお願いします。」と入力し、3件目となる歯医者を予約。

クリーニングがおまけみたいな感じになっているが、頭の中が抜歯という単語で埋め尽くされていて自分でもコントロールできないのである。

今私の頭の中を脳内メーカーで診断したら

抜歯抜歯抜歯抜歯抜歯抜歯マイケル抜歯

という結果が出るだろう。

マイケルまだいてくれたのか。

 

セカンドオピニオンの次にサードオピニオンという単語もあるということを初めて知った。

知らないうちに、どんどんステージが上がっている。

けれど、自分の納得いく答えに辿り着くまで諦めない。

 

推しが出るまで引き続けるガチャのように、

抜歯しなくていい未来が手に入る歯医者さんを巡り続ける。

 

出るまで引けば実質無料、

うおおおおおおおお!

 

気合い十分で挑んだサードオピニオン。

 

先生に今までの経緯を説明。

決断が下されるその時までが永遠に感じる。

どきどきドキドキDOKIDOKI…

 

「他の歯医者さんで抜歯が必要だと言われたんですか?

う〜ん、完全に埋まってるし、虫歯のリスクはなさそうですけどね。」

 

なんですと?

 

これまでの長い道のりを経て、私の頭には

ホワイトニングをする→矯正が必要→矯正には抜歯が必要→いつかは抜く運命

という“抜歯確定ロードマップ”が完成していたので、

驚きの展開に思考がついていかない。

 

バッシ、シナクテモイイ

 

完全に思考回路はショート寸前どころかエラーを起こしている。

「もしかしたら矯正中に抜歯が必要になる可能性もありますけどね。」

という先生の一言も耳に入らない。

 

 

私の心は希望の光で満ちていた。

抜歯回避、完全確定UR演出。

ありがとう!ありがとう!やったよ!

Yeaaaaaaaaaah!

マイケルも大喜びしている!!

 

 

思えば、歯のことにこんなに悩んだのは人生で初めてだった。

 

ホワイトニングをしたい、矯正で歯並びを整えたい。

歯医者に通ううちに、“きれいな歯”になることにいつの間にか執着していた。

 

しかし抜歯という恐怖からの解放により、

なんだかそれら全部がどうでもよくなってしまった。

 

これはもう歯の話どころか人生に対する行動力の話になってきている。

ここまで動けた自分を褒めたい。

 

他人が言う「普通は」「だいたいみんなそうしますよ」には乗っからず、

「私はどうしたいか?」に向き合った。しかも3回も。えらい。えらすぎる。

 

ただの執念とか意地じゃなくて、

納得できないまま進みたくないっていう、人生における私の基本姿勢なんだと思う。

この粘り強さはきっと、いろんな場面で私を助けてくれるだろう。

 

夫に撮ってもらう写真がどれも盛れてなくて、毎回「かわいくない…盛れてない…」と嘆いていた私。

 

顔が画角の真ん中にくるようにして、顔がメインの写真は加工アプリで、背景メインの時はノーマルカメラで撮って。視線を少しはずした時こそシャッターチャンスだからね!あくまでさりげなく撮りました感を演出して。携帯の角度は斜め15度に傾けt

 

私の白熱指導のおかげか、最初は面倒くさがっていた夫も今では自発的に「撮ろうか?」とカメラを構えてくれる。

観光スポットの入り口や食事の際には、無言で20枚連写するスキルを身につけてくれた。

すばらしい成長である。

 

ちなみに、しばらく歯医者には行っていないという夫にも、私から歯医者に行くよう促していた。

「しめしめ、虫歯がたくさんあるに違いない。私と同じ絶望を味わうがいい。くくく…。」

などと夫婦らしからぬことを思っていたのだが、

夫は「歯並びめっちゃ綺麗って褒められた!虫歯もなかったし、ホワイトニングの契約もしてきたよ〜。」と笑顔で帰宅。

 

……なんでやねん。

 

こちとら数々の試練を乗り越え、歯医者を3つも渡り歩き、

「抜歯回避」という勝利をやっとの思いで掴んだというのに、

夫はいとも簡単に美白への切符を手にしていたのだ。

 

あまりにくやしい。

 

結局私がこの長い歯医者の旅で手に入れたのは、

歯磨きを丁寧に行う習慣と、歯軋り対策のために作ったマウスピース、

そして「抜かなくてよい」という診断結果と引き換えに得た、親知らずの存在の認知。

 

この世で私を怯えさせる存在が、

クレカの明細と知らない番号からの着信と親知らず(←NEW!)となってしまった。

どうにかこうにか医療の進歩により、注射ひとつで歯がスゥ…と溶けてくれるような薬が開発されはしないだろうか。

 

奇跡の新薬に淡い期待を寄せつつ、親知らずと共存しながら今日も丁寧に歯を磨く。

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