バイトの男の子から給料が低いとぼやかれた、と呆れ顔の店長。
お願いしている仕事もきちんとこなせてないのに何を言うのかと、困っているらしい。
年齢的には10個ほど下だけど、ポジションで言うと私の先輩にあたるその子は、バイトから社員に昇格するはずだったが一旦保留にされた経緯がある。
理由は発注ミスや非効率的な作業が目立つから。
店長曰く、仕事内容は変わらないのに給料だけアップさせるのは納得いかないしまだ早い、とのこと。男の子は“社員”とか“副料理長”とかいうステータスにこだわっているみたい。肩書きにモチベーションの重きを置くのは、責任のある仕事が嫌いな私には理解し難いことである。
人材の教育って本当に大変なことです。人は自分の思った通りには動いてくれないし、自分の伝えたことを100%理解してもらうのも根気がいる。会社員時代によく思い知った。
お店を経営するにあたり、従業員にコンセプトや素材へのこだわりを熟知してもらうことや、接客態度などを徹底してもらいたい店長の気持ちもわかる。
でも、アルバイトの子全員に自分の理想とするクオリティを求めるのは、完璧なマニュアルでもない限りなかなか困難。だからといって細かなルールをたくさん詰め込もうとすると、嫌になって辞める原因になってしまう。
やる気のない人を雇うほどお店も寛大ではないが、人手が足りなくなるとそれはそれで困るので、アメとムチの匙加減は常に悩みの種。
私が最初にお店に行って面接した日も、アルバイトの子への対応について店長に相談された記憶がある。私もこれからここで働くっていうのに。
お給料は我慢料、とはよく言ったけど、流石にもう時代錯誤な考えになってきていると思う。私も今はもう、会社やクライアントへの貢献度をお金に換算したものが給与だと捉えている。
もらえる金額で間接的に「会社にとって今のあなたはこのくらいの価値です。」と言われているようなもの。だから自分から昇給を申し出るならそれなりの材料が必要ですよね。時には自分からアピールすることも大事。誰も他人に興味なんてないんですから。
まあでも純粋に仕事を頑張れば評価はされるし、努力の結果も成果として現れるはず。頑張ってるのに給料が上がらない!というのは、上司が人を見る目がないかまだ頑張りきれていない可能性もあります。
上司やチームのメンバーに気に入られるのも自分の仕事を円滑にこなすために必要なスキルであり、業務の延長線上にある。
相手をよく観察して交渉の方法を見極めるのも大事な戦略。バイトの男の子も、店長とは付き合いが長いはずなんだからもう少し考えて言えばよかったのに、と思う。どんな言い方をしたのかまではわからないけど。
人に好かれたり素直であることは効率的で経済的、と最近読んだ本で学んだ。
嘘を挽回するには時間やお金などのコストがかかるから正直なことが最も経済的だ。というニュアンスで書かれた内容だったけど、今回の時給問題にも当てはまるような気がする。
最近入ったアルバイトの女の子は、ケーキ屋さんでもバイトをしていて家族のように良くしてもらっているとのこと。なんとディズニーランドに一緒に行ったこともあるらしい。しかも費用は全て出してくれたそうな。
いくら仲が良くて気に入られていたとしても、旅行に連れて行ってもらえるなんてなかなかあることじゃないですよね。アルバイト先の雇い主さんと女の子の人の良さが伺えます。
バイトの男の子と店長の間に足りないのは信頼関係なのかもしれない。店長のお店にバイトとして雇われているから主従関係があるのは当然なんだけど、男の子的には師弟関係であると心を燃やしていたらどうだろう。
一人前として認めて欲しいし、店長と対等に並びたいから、正社員という肩書きを欲しがったり給与面での不満が出てきたりするのでは、と勝手に少年漫画的な展開を想像してみたり。
もちろん信頼関係が全く無いなんてことはない。ただ、想いがすれ違っているだけ。それゆえに側から見ているこちらはもどかしいっ。(8割私の妄想です。)
“お金は後からついてくるもの”ということが、人生経験が20年そこらの少年にはまだわからないことなんだと思う。
もちろん給与は働く上で大事なモチベーションポイント。
でも給与が安くても職場環境が良い場合もあるし、給与が高くても仕事内容や評価基準に納得できない場合もある。それはいろんな環境で働いてみないと実感は湧かないし、言葉ではうまく共感を呼べないんだけど。
働くことで得られる経験はお金では買えない。だからこそ環境は大事で、何よりも優先して考えるべき事項です。
私は転職を3回ほど経験していますが、辞める理由はいつも“ここで学べることがなくなったから”でした。自分にリターンがないなら会社に貢献し続ける義理なんてない、というものすごく自分本位な価値観で常に働いています。(もちろんお仕事がいただけること、毎日やるべき仕事があることには本当に感謝の気持ちでいっぱいです!)
そうやって最適な環境を探すうちに会社員として働くことを諦め、フリーランスに落ち着いたわけですが…。
パートタイムも、収入というよりは外に出るきっかけが欲しかったから始めました。何か新しい刺激で生活に変化をもたらしたい、と。結果としては大正解で、日々学びも多く、毎日楽しく労働できています。
お金を稼ぐことと、経験を基に自分の人生を豊かにすることは別のベクトル。
うまく交わればラッキーだし、努力の過程に成功が潜んでいると思っています。
そういうのって、色々試して失敗してまた新しくやってみてを繰り返してわかってくることなんですよね。
バイトの男の子が悟りの道へと歩みを進めてくれたらいいな、と親心(?)を育む今日この頃でした。