「イカ、食べに行かん?」
ダジャレではない。
旅行&ドライブ好きな夫の、定期的に起こる発作である。
私は正直、イカはそこまで得意じゃない。
嫌いじゃないけど、わざわざ食べに行くほどでもない。
しかし、新鮮なイカを改めて食べる機会などなかなかないかもしれない。
「佐賀県の呼子(よぶこ)ってところにあ店があるんだけどね、車で2時間くらい。」
佐賀か〜。なかなか遠方である。
でもドライブがてら、遠出するのもいいかもしれない。
出不精な私をこうして外へ連れ出してくれる夫には、何気に感謝している。
福岡の中洲川端と博多にも店舗はあるが、イカといえば呼子、呼子といえばイカ、というくらい呼子のイカは有名らしい。
せっかくなら足を運んでみようじゃなイカ!
ということで、佐賀県にある「河太郎 呼子店(かわたろう よぶこてん)」へ行ってきました。
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河太郎は、日本で初めて“いけす料理”を始めたという老舗。
「元祖」という言葉に惹かれるのは人間のサガなのでしょうか。
美味しいイカが食べられる予感。
私たちがお店に着いたのは11時過ぎ。受付はタッチパネル式だった。
待ち時間は約30分ほどらしい。
順番が来るまで、お店の隣にあるお土産屋さんで待機。
自動ドアが開くと同時に、ふわっと磯の香りが。
サバにサザエ、タイにあじなど、新鮮な魚介類が売られていた。
もちろんイカも。
水槽でひらひらと泳ぐイカをまじまじと見たことがあっただろうか。
泳ぐ魚たちを眺めたり、お土産に買って帰るイカシュウマイを選んだりして過ごし、お店の前に戻る。到着した時よりも、待っているお客さんが増えていた。
どうやら今から受付すると1時間半待ちらしい。
早めに来て本当によかった。
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案内された席は、いけすのすぐ隣。
水に漂うイカを眺めながらの食事は、「今からこの子達をいただくのかぁ…。」と少し複雑な気持ちになる。
いよいよ運ばれてきた活き造り。
きれいで美味しそうだ。
口に入れた瞬間、キュッと締まった歯ごたえ、そこからじんわり広がる甘み。
イカって、こんなに美味しいんだ。
よく考えたら活き造りって人生で初めてかもしれない。
よく見たらまだ足がうようよ動いている。
イカの透明な肌の上に浮かぶ茶色い斑点も、どくどくと脈を打つように動いていた。
生命の存在感がひしひしと伝わり、「ちゃんと美味しく食べるからね」と、心の中でそっと誓いながら箸を取りました。
いつまでもしんみりしていては勿体無いので、捌きたての新鮮なうちにいただく。
1切れ目はお塩で、2切れ目はレモンを搾って、3切れ目はわさび醤油で。
それぞれイカの甘みを引き出してくれるベストパートナーたち。
この活き造りが味わえるのは、人気ナンバーワンメニューの活き造り定食。
お刺身を食べた後に、イカの頭と足の部分を天ぷらにして再提供してくれる。
私は悩んだ末、イカの天ぷらがメインの天ぷら定食を注文。
久しぶりに食べるイカに、最後まで食べ切れるかビビったのである。

手前にあるのが天ぷら定食(1,900円)。奥にあるのがいか活造り定食(3,850円)
少食なので参考になるかわかりませんが、刺身3切れと天ぷら定食で私のお腹はパンパンになりました。
追加で注文したイカシュウマイも1つ食べるのが精一杯だったほど。
ご飯がとにかく山盛りだし、天ぷらもかなりボリューミーです。
手前の野菜に隠されたイカのゲソが何本食べても全然無くならなかった…。

天ぷら定食 1,900円
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テーブルから見える海。
食材を軸にして旅先やお店を選ぶのは、想像以上に満足度がありました。
目的が明確だからこそ、下調べも楽しいし、選んだお店に対しての納得感もある。
食材について調べたり、値段に見合う価値を考えるようになった自分に、大人になったな〜と、しみじみ。
命あるものをいただくということ。
そのありがたさを、イカが教えてくれました。
ただ美味しかっただけじゃない。
味覚だけでなく、心にも残る、特別な旅になりました。