急がば回れ、という言葉がある。
急いでいる時こそ危険な近道を選ばず安全に進める道を選んだ方が目的を達成するのが早い、という例えだ。
私はせっかちだけど、心配性でもあるので安易に最短ルートは選ばない。
どうすれば効率的に物事をこなせるかをいつも考えている。
計画の末、自分の思い通りに事が運ぶと嬉しくなる。
ピタゴラスイッチがうまくゴールした時のような達成感がある。
ピタゴラスイッチは作ったことがないけれど。
整形外科の帰りに、コンビニで資料をコピーしようとしたときの話。
駅に着いたのは、次の電車の時刻まであと6分という頃。
この外出のついでにコピーは済ませたい。
ここから最寄りのコンビニまでは徒歩2分。
先に電車に乗り、到着した後でコンビニに寄ることもできる。
しかしそれだと家までは若干遠回りになってしまう。
走って最寄りのコンビニまで行くか、
遠回りでも家の近所のコンビニへ行くか。
…急げば間に合う!
自分の脚力を信じて最寄りのコンビニへ。
思ったより近かった。
コピー機は逆サイドの入り口にあるようだ。
レジに並ぶお客さんの間をアイシールド21のセナのように掻い潜り
(※店内は走っていません。早歩きしました。イメージです。)
事前にネットプリントに登録しておいた資料のQRを素早くコピー機へかざして小銭を投入。
カラーと白黒で0.5秒悩んだが、設定変更も煩わしい。
ええいカラーでコピーしたれ!
今何分なのか、携帯の時刻を見る余裕もない。
印刷物が出てくるまでの待ち時間がものすごく長く感じる。
youtubeの広告を見ている時のようだ。
5秒すらスキップしたい。
コピー機から滑り出た印刷物を取り、
急いで駅へと戻る。
横断歩道の信号待ちで財布から電車賃を取り出しておく。
訳あって交通費の領収証を取得しなければならないのでICカードは使わない。
小銭を握りしめ、さらにダッシュ。
改札口から人がぞろぞろ出てきている。
嫌な予感がうっすらしたけど、最後まで諦めずホームへ向かう。
電車は無事に発車した。
私を置いて。
次の電車は12分後。
すっかり都会の運行感覚に慣れてしまったシティレディ―。
田舎に住んでいた時は1時間に1本でも便が多い方だと思っていたのに、
今では10分すら待てなくなっている。
電車を待ちながら、印刷した資料を確認する。
ここでさらにガッカリ。
出かける前に急いで準備したデータ、
画質が足りなくてガビガビになっていた。
これでは使い物にならない。
どうしてコンビニで確認しなかったのか。
カラーコピーだから60円もしたのに。
放心していたら次の電車が来た。
これはもう一旦家に帰って体制を立て直すしかない。
心身ともにギリギリの体力でありながらも
なんとか帰路につく。
帰宅してすぐにデータを再確認。
よくよく見たら、jpeg形式で書き出した画像だけが劣化している。
確認を怠るなんてらしくない。
いつもなら何度も何度もチェックして自分を安心させるのに。
アプリのネットプリントを利用したからダメだったのか、
pdf形式のデータなら画質が落ちないのか、
色々調べたけど今の私は自分に信用がない。
パソコンの前でしばらくうな垂れていたが、ハッと気がつく。
USBを使ってメディアプリントすればいいじゃん!
なんで気が付かなかったんだろう。
なぜネットプリントにこだわっていたのか。
気を取り直して家の近所のコンビニへ。
これなら間違いなくきれいに印刷できるでしょ。
意気揚々とコピー機を操作。
メディア印刷ならカラーコピーでも50円なのか。
10円安い。
…あれ?
お財布に小銭がない。50円どころか1円も1枚もなにも入っていない。
はて?
そういえば整形外科から帰宅した時に
小銭が重かったから全部出したんだった…。
もうここまでうっかりが過ぎると面白くなってくる。
いつもの自分じゃなさすぎて、どうかしてしまったんじゃないかとすら思う。
1,000円札はある。
でもコピー機はお札が使えない。
取りに戻るか?
いやいや、近所とはいえ面倒すぎる。
とりあえず落ち着こう。
おかしいやら悲しいやらで情緒が不安定になりながら
店内を無意味に徘徊。
仕方ない。
お札を崩すために飲み物を1本買うことにした。
135円。
整形外科に向かう際、行きだけでもと片道220円の電車賃を浮かせるために45分の道のりを歩いた。
無駄になったカラーコピーの60円+飲み物135円=195円
うん。
全体で見たら損はしていない。
むしろ200円で急がば回れの真髄を学べたと思えばプラスである。
やっとのことでコピーを済ませ、生還。
ただ一枚、紙切れを手に入れただけなのに
ものすごい達成感だ。
急がば回れ。
肝に銘じた。