夫はよく「元は取れた」と言う。
服がくたびれて着られなくなったり、家電が壊れて処分したりするときに、この言葉が出る。
いくらで買って、どのくらい使ったか。いわば減価償却のような考え方だ。
何かを買うときも、それを何のために、どのくらい使うのかを念頭に、いくらまで出せるかを検討する。
例えば、仕事で使うリュック。
長く使うことが想定される。
今使っている夫のリュックは3万円、一方私は1万円。
私も、いいものを買って長持ちさせたいとは思う。
ただ、それ以上に「今いくら出せるか?」
「収入に見合った支出か?」を考える派なのだ。
もちろん、夫もめちゃくちゃなお金の使い方をするわけではない。
ちゃんと計画性はある。
ただ、一度に使えるお金の限度が、私より高いのである。
以前、夫が8,000円もする白Tシャツを買ったことがある。
私は心の中で「8,000円? Tシャツに?」と思ったが、
本人は大変気に入っている様子。
「大事に着なくちゃ♪」とご機嫌だったので、何も言わなかった。
ちなみに、夫はご飯を食べるときによくこぼす。
自宅でも外食でも、とにかくポロポロとこぼして服を汚す。
家でカレーを食べるときなんて、こぼすからという理由で上半身裸になったりする。
そんなおこぼし大魔王が、白Tに8,000円。
怖すぎる。
まあでも、確かに生地はしっかりしていて、着心地もよさそう。
値段の意味もわかる。
何にお金をかけるかは人それぞれだし、口出しはすまい。
そうやって温かく見守っていた矢先、さっそく汚していた。
えええ。
「まだ2回くらいしか着てないのに……」と、
しょんぼりしながらシミを見つめている。
どこでついた汚れなのかも、わからないらしい。
可哀想に、と同情する反面、だから白Tに8,000円なんて富豪の買い物だったんだよ……! とも思った。
最近、あちこちで見かける地域限定の「〇〇Pay」。
いわゆるプレミアム付き商品券というやつで、私たちの住む地域でも販売されていた。
一口5,000円で、1人最大3万円まで購入できる。5,000円買うと1,000円分お得になる仕組みなので、3万円分買えば、なんと6,000円もお得になる。
このことで、私と夫は少し揉めた。
私は、いくらお得になるからといって、一度に3万円の出費は嫌だと主張。
しかし夫は、「スーパーでも使えるし、どうせ生活費になるんだから、6,000円もらえた方が絶対お得!」と譲らない。
私は納得できなかったのだが、夫がどうしてもと言うので、「じゃあ、あなただけ買って」と、話し合いは終息した。
そもそも私は、チャージして使う系のお金が苦手なのだ。
あらかじめまとまった金額を入れておいて、買い物をするたびに残高が減っていく。
あの感覚が好きになれない。
しかも、今回の地域Payには使用期限がある。
3万円は確かにスーパーで使えば食費として消費できる金額ではあるんだけど、どうにも気が進まない。
6,000円もお得になるのだから、夫の言い分もよくわかる。
でも、一度に3万円が出ていくことにも抵抗があるし、使用期限を気にしながら買い物をするのも落ち着かない。
得をするためにお金を使っているはずなのに、なんだかお金に急かされているような気がする。
理屈はわかる。でも、なんかこう、嫌なのである。
夫は、最終的にどれだけ得をするかを考える。
私は、今あるお金をどう使うかを考える。
どちらが正解というわけでもないのだけれど、こういう価値観の違いは、なかなか折り合いがつきにくくて困る。
いっそ、こんなことで悩まなくていいくらい、お金持ちになれたらいいんですけどね。
そしたら8,000円の白Tシャツなんて、何百枚でも買ってあげるのに。





